木村旭は信じられない様子で栗原愛南を見つめ、電話の相手に尋ねた。「何だって?」
「木村様、私たちはここでノラ研究所との提携のために必死に頑張ってきたんですよ。そちらがノラ研究所と提携できたなんて、なぜ早く教えてくれなかったんですか?それに、この金額ですが...月額わずか5000万の枠なんて。発注元に、毎月もう少し増やせないか聞いていただけませんか?価格は相談次第ですし、現在の契約書の単価も少し安すぎるように思うんですが...木村様、ノラ研究所のどなたと交渉なさったんですか?こんな好条件でこの注文を獲得できるなんて!」
法務部長の言葉に、木村旭は夢を見ているような気分になった。
彼は一瞬呆然として、続けて言った。「いや、何のノラ研究所?こっちは全然何の話かわからないんだけど...つまり、私たちと契約を結んだ発注元の会社がノラ研究所だっていうの?何か勘違いしてないか?」
法務部長はすぐに笑って答えた。「そんなはずありません!契約書にはっきりと書かれていますし、最近ずっとこの件について打ち合わせを重ねてきました。ノラ研究所の正式名称を間違えるはずがありません!契約書には既に電子印も押されていますから、間違いようがないんです。木村様、本当に会社に大きな功績を立てられましたね!そうそう、先ほど申し上げたことですが、お聞きになりましたか?枠を増やすことは可能でしょうか?」
木村旭は「...」
彼は茫然と栗原愛南を見つめ、そして口を開いた。「枠を増やすことは可能ですか?」
栗原愛南は顎に手を当てながら、「それは、うちの会社の経営陣と相談してください。もう連絡を取っているはずです。ただし、一つ条件があります。今日中に必ず契約を締結することです」
「ああ、はい」
木村旭は呆然としたまま法務部長にその言葉を伝え、電話を切った後、再び呆然と栗原愛南を見つめた。「なぜノラ研究所があなたの会社だと言ったんですか?もしかして...あなた...」
木村旭は突然、妹の手術が危機的状況にあった時、栗原愛南が手術室に入って助けてくれたことを思い出した。あの時、院長はノラだけが妹を救えると言っていた...
つまり...
栗原愛南がノラ?!
木村旭は自分のこの考えがおかしいと感じた!だってノラのような凄い人が、こんなに若いはずがない!