南條家……祖母……
母は海浜市でこれほど長い間隠れていたのに、能力があるのに、家族を中流程度の生活水準に保っていただけ……母のやり方は、姉の愛南と何が違うのだろう?
彼らは何かから逃げているようだ……
狐、ウサギ……
つまり、祖母の代から、南條家の人間だったの?
各世代が、この争いを経験しなければならないのだろうか?
敗者は幕を下ろす、祖母のように。
私は母の側について隠れていたけど、姉は南條家の人々に連れて行かれ、南條家の争いに巻き込まれた。
栗原愛南は南條家の秘密の一端に触れたような気がした。
もし狐の方からもっと情報を得られれば、南條家の真相が分かるかもしれない!
栗原愛南は考え込みながら、その写真を見続けた。
突然、彼女は違和感に気付き、急いで写真を手に取り、裏面を見た。
案の定、そこには文字があった。
優美な筆跡で、女性が書いたものに違いない。下には日付と場所、そして一言:元気です、ご心配なく。
栗原愛南は眉をひそめた。
当時母はまだ幼く、南條静佳の筆跡は分かるので、この写真の文字は祖母が書いたものに違いない。
でも祖母はこの写真を誰に送ったのだろう?
栗原愛南は顎に手を当てた。
ご心配なく……
祖父かな?だって母が石から生まれたわけじゃないし。
それとも祖母の親友?あるいは南條家の誰か?
栗原愛南には分からなかった。ため息をつきながら、手の中の写真を下ろし、考えた末、財布の中に入れた。
あの大火事で祖母の持ち物は全て焼失してしまい、この写真が母の南條静佳と祖母の唯一の写真となってしまったのだから……
……
門の外で。
橋本南はガラス拭きを終えて、はしごを持って立ち去ろうとした時、ちょうど外に出てきた栗原光雄が管理人に尋ねるのが聞こえた。「あのメイドはどこだ?」
橋本南は驚いて、また自分に文句を言いに来たのかと思い、慌てて物置に隠れた。
すると管理人の声が聞こえた。「さっきまで上の階で働いていましたが、今はどこにいるか分かりません。」
「そうか、分かった。」
栗原光雄はそう言うと、階段を上がっていく足音が聞こえた。
橋本南は息を殺して、心の中で不満を募らせた!
さっき気付いたけど、この栗原光雄は自分があの事故から救出した人なのに、この人は何度も自分に嫌がらせをしてくる。