「命の恩人って何?」
栗原光雄は尋ねた。
橋本南は手を振って言った。「大したことじゃないわ。もう言わないけど、とにかくありがとう!」
橋本南は片手に服を持ち、もう片方の手で脚立を持って、階段を降りようとしたとき、栗原光雄はすぐに彼女から脚立を受け取った。「私が運んであげるよ!」
橋本南は少し躊躇した。「この脚立、重いのよ!」
栗原光雄は袖をまくり上げた。「君という女の子にも劣るってことか?」
橋本南は微笑んで、脚立を栗原光雄に渡した。
栗原光雄の手は明らかに沈んだ。
彼はこの脚立で倒れそうになったが、橋本南の意味深な視線を見て、咳払いをして強がった。「そんなに重くないよ」
「ふふ」
橋本南は雑巾とガラス拭きの道具、それに服を彼に渡し、脚立を受け取った。「私がやるわ!」
橋本南は軽々と階段を降りた。
栗原光雄は彼女の横について、気分が沈んでいた。直接尋ねた。「女の子なのに、どうしてそんなに力が強いの?」
「仕方ないわ。両親が早くに亡くなって、小さい頃から一人で生活してきたから。家の荷物も全部自分で運ばなきゃいけなかったし、前は出前のバイトもしてたの。一番忙しい時は片手で五つの出前を持って、力はそうやって鍛えられたのよ!あなたみたいな弱虫とは違うわ……」
「僕は弱虫じゃない、なんてこと言うんだ?僕だってジムに通ってるんだぞ!」
栗原光雄は反論した。
橋本南は口角を引きつらせた。「あなたの言うジムって、ちょっと走るだけじゃないの?」
栗原光雄は頷いた。「そうだよ、うちでは全員毎日最低2キロ走らなきゃいけないんだ。絶対に欠かさずに!」
彼はこの言葉を少し心虚そうに言った。
兄弟の中で、彼が一番怠け者で、小さい頃からランニングをサボっていた。他の兄弟たちは確かに欠かさなかったが、彼はそうではなかった。
橋本南はこの話を聞いて目を転がした。「一日2キロなんて大したことないわよ。私は出前の時、一日5万歩も歩いてたのよ!」
栗原光雄は反論した。「みんな電動自転車で配達してるじゃないか。僕が何も知らないと思ってるの?」
橋本南はすぐに言い返した。「バカね、電動自転車が階段を上れる?マンションに入れる?店舗に入れる?私は注文をたくさん取るために、早く配達を終わらせなきゃいけなくて、全部走って配達してたの。本当のことよ!」