第532話

栗原光雄の心に揺らぎが生まれた。

彼は本当は栗原愛南に不満があったわけではない。ただ先ほど、八木珊夏が愛南は義姉には婚礼衣装を貸すのに、自分たちには貸したくないと言い出した時、急に不公平さを感じただけだった。

彼も兄も妹の兄なのに、妹がどうして差別的な扱いをするのだろう?

しかもその差があまりにも大きすぎる……

栗原光雄が顎を引き締め、表情が和らぎかけた時、八木珊夏が突然口を開いた。彼女は栗原愛南を見つめ、委屈そうに言った:「愛南ちゃん、親族同士は互いに理解し合い、尊重し合うべきです。私のことが嫌いなのは分かっています。でも、栗原お兄さんにこんな仕打ちをするのは止めてもらえませんか?彼は本当にあなたのことを大切に思っているんです。あなたが戻って来た最初の数日間、私と買い物に行くたびに、あなたの分も買おうとしていたんですよ……彼のためにも、私のことを少しは認めてくれませんか?」