第569話 待って!

一方、宴会場では。

栗原光彦は斎藤愛南を慰めていた。

斎藤愛南は啜り泣きながら、「分からないわ。お爺さんは私を見捨てたの?これからどこに行けばいいの?」

栗原光彦が口を開いた。「うちに来なよ!俺と結婚するんだろ?!だったらいっそうちに住めばいいじゃないか!」

斎藤愛南は首を振った。「それはちょっと...」

傍にいた井上斉子が即座に頷いた。「そうそう、それはまずいわ。私、京都に家があるから、そっちに住むのはどう?」

栗原家に住めば、恩人に毎日会えるじゃない?!

斎藤愛南は一瞬躊躇してから、栗原光彦を見つめた。

栗原光彦は即座に言った。「何がまずいんだよ!決まりだ、うちに住むんだ!親も大歓迎するはずだ!荷物はある?手伝うよ。」

斎藤愛南は俯いた。「家の物は、何もいらないわ!斎藤家の物は一切受け取らないって約束したんだもの、約束は守らなきゃ!私には手足があるんだから、自分で仕事を見つけられるわ!」

栗原光彦は頷いた。「そうそう、それに俺もいるしさ!俺が養うよ!」

斎藤愛南は前を見つめながら言った。「どうして私たちの家はこうなってしまったの?」

そして歯を食いしばって続けた。「全部あの南條真美のせいよ!今日の婚約パーティーを台無しにできたらいいのに!」

そして栗原光彦の方を向いて言った。「ねえ、お兄ちゃんを気絶させて連れ出すのはどう?お兄ちゃんがいなくなれば、新郎がいなくなれば、この婚約パーティーは進められないでしょ?」

栗原光彦の目が輝き、何か言おうとした時、老人の声が聞こえてきた。「お前の兄がいなくても、三男も四男もいる。我が斎藤家に最も不足していないのは、男の子だ!」

斎藤愛南が振り向くと、斎藤お爺さんが彼女の後ろに立っていた。

斎藤愛南は鼻を鳴らした。「他の兄さんたちは斎藤真司みたいに言うことを聞かないわ!」

斎藤お爺さんは目を伏せた。「南條家の女を娶る者が家業を継ぐ、そう聞いたら従わない者がいると思うか?」

斎藤愛南は呆然とした。「...そんな話があったの?!」

斎藤お爺さんは頷いた。「そうだ。だから、今日お前は邪魔できない!」

斎藤愛南は言った。「お兄ちゃんを連れ出せないなら、南條真美を何とかするわ!」

斎藤お爺さんは嘲笑うように言った。「南條真美が、お前如きに手出しできる相手だと思っているのか?」