森川北翔は栗原愛南の様子がおかしいことに気づき、すぐに一歩前に出て、声を潜めて尋ねた。「どうした?」
彼は栗原愛南の手からスマートフォンを取り上げた。
栗原愛南は顎を引き締めたまま、避けようとはしなかった。
森川北翔は動画を見た後、眉をひそめ、薄い唇を固く結び、拳を強く握りしめた。そして栗原愛南の方を向いて言った。「斎藤真司を選べ」
彼は栗原愛南に後悔してほしくなかった。
それに、今日斎藤真司を選んでも、すぐに結婚式というわけではない。まずは状況を落ち着かせることが先決だ。
栗原愛南はその言葉を聞いて、森川北翔を一瞥した。
彼女は尋ねた。「それで?」
森川北翔は口を開いた。「結婚式の前に、全力でお前の母親を救い出す。救い出せなかったら、お前は彼と結婚すればいい。救い出せたら、俺と一緒に行こう」