第553章

森川北翔はすぐに後を追い、見覚えのある顔を目にした。

その人物は白衣を着て、栗原愛南を驚いた表情で見つめており、金縁の眼鏡をかけていた。

その顔を、森川北翔は以前海浜市で見かけたことがあった。

一度、栗原愛南が誤解から警察署に行った際、貧血状態で病院に搬送されたことがあった。

病院で、この栗原牧夫という医師が診察したのだ。

栗原牧夫は彼女が鉄欠乏性貧血症で、一度貧血で倒れると、ショック状態になり非常に危険だと言った。

しかし、彼は海浜市の医師のはずなのに、なぜここにいるのだろう?

そして、栗原愛南はなぜここを訪ねてきたのだろう?

診察室には他の患者もおり、その時栗原愛南を眉をひそめて見つめていた。「あなた誰?何の用?診察は順番待ちですよ!」

栗原愛南はその人物を完全に無視し、栗原牧夫が口を開いた。「申し訳ありません。この方とは少し私的な話があるので...」