第554章

栗原牧夫は顔を横に向け、潤んだ目尻を拭った。

栗原愛南は急かすことなく、彼が落ち着くのをゆっくりと待った。

実は栗原愛南が栗原牧夫と姉に関係があると疑ったのは、数年前に見た一枚の写真だけではなかった……

姉の身分で目覚めた後、ショック症状も貧血症状もなかったことから、彼女が昏睡中に誰かが鉄分を補給してくれていたことは明らかだった。

そしてその人物は、栗原牧夫以外にありえなかった。

部外者が彼女の状態を理解し、これほど完璧な処置をすることはできないはずだった。

当時は疑いだけだったが、前回京都病院で栗原牧夫らしき姿を見かけてから調査してみると、彼がこの病院の医師で、ここ数年は海浜市に出向していたことが分かった。

これらの状況を総合して、栗原愛南は推測を立てたのだった。