第621話

川内美玲の表情には怒りが浮かび、普段の冷たい顔つきが一変した。藤原夏菜子を睨みつけ、箒を直接その腕に打ち付けた。

藤原夏菜子はすぐさまその箒を掴んだ。

冷たい目で川内美玲を見つめ、反撃しようとしたが、相手が女性だと気付くと、ただ箒を強く奪い取って地面に投げ捨てた。

川内美玲は押され、数歩後ろに下がった。

よろめきながらも、栗原愛南は動かなかった。先ほどの藤原夏菜子が力を抑えていたのを見ていたからだ。

普段は川内美玲を嘲笑っているこの男も、結局は分別をわきまえているのだ。

しかしその次の瞬間……

川内美玲の側近、つまり川内側にいる狐のスパイである広石一朗が前に出て川内美玲を支えようとしたが、まるで支えきれなかったかのように見せかけた。

彼は大声で叫んだ。「川内さん、危ない!」