第620章

その言葉に、川内亮文の周りの人々が怒りを露わにした。

栗原愛南は最初、藤原部長親子が狐の手下ではないかと疑っていたが、すでにその疑いは晴れていた。

特務機関が次期継承者としてそのような人物を選ぶはずがないからだ。

彼らを選ぶ際には、必ず先祖代々まで徹底的な調査が行われており、全く問題のない人物だったはずだ。

実際、藤原部長の父は任務遂行中に殉職している。

このような家系に、立場の問題など存在するはずがない。

昨日、川内亮文が語ったところによると、藤原部長の父が亡くなった後、藤原部長は川内お爺様が直接育て、特務機関を任せる決意をしていたという。

だからこそ川内亮文が特務機関で働いていないのに、藤原部長が副総裁になったのだ。

ただ、ここ数年で何があったのか、藤原部長と川内お爺様の間の溝が深まる一方だった……

さらに、先ほどの川内亮文の言葉の後、藤原部長は口を閉ざし、何も言わなくなった。

これは南條真美を国際部の者たちが連れて行けるかどうか、彼が実は気にしていないということを示している。

そのため、栗原愛南は親子の疑いを完全に払拭した。

彼女は視線を、藤原部長側で最初に口を開いた張本泰という男に向けた。彼が最初に両者の対立を煽ったのだ。

彼に同調した数人は怒りに満ちており、彼によって感情を煽られていた。

この男こそが、狐の内通者に違いない!

そう考えながら、彼女は川内亮文の後ろにいる人々にも目を向けた。

最初に口を開いたのは、川内美玲の側近で、前回自宅で南條真美を逮捕しに来た人物だ。

彼の言葉は一見川内家を擁護しているように見えたが、両者の対立感情を極限まで高めてしまった!

つまり、この側近もまた狐の内通者なのだ!

おそらく川内お爺様と藤原部長の関係が悪化したのも、この二人の内通者の仕業だろう!

この狐は...本当に狡猾だな!

特務機関のような組織に一人の内通者を送り込むのも難しいのに、彼女は二人も送り込んでいた!

二人の内通者を使って両者の対立を煽り、特務機関の内部を分裂させることで、特務機関の権力を弱め、国際部門の存在感も薄めている……

栗原愛南も狐の手腕に感心せざるを得なかった!

そう感心している間に、現場は混乱の極みに達していた。