第619章

南條真美はそう言うと、そのまま目を閉じた。

昼になり、二つのライトが消え、彼女の真っ赤な目がようやく少し休まることができた。

ただし、座っている椅子には背もたれがなく、もたれかかることさえ難しかったため、今の彼女は腰と背中が痛かったが、それでも栗原愛南の前では平然とした様子を装っていた。

彼女は今日来る人が必ず自分を連れ出してくれると、確信しているようだった。

これもまた狐の能力への自信の表れだった。

栗原愛南は彼女のその様子を見て、目を伏せ、ゆっくりと部屋を出た。

狐は一体何者なのか?どんな勢力を持っているのか?国際部門にどれほどの勢力の人間を潜り込ませているのか?南條真美がそれほどまでに自信を持てるのは何故なのか。

栗原愛南がそう考えていると、森川北翔が近づいてきた。「国際関連部門の者が来ました。」

栗原愛南はすぐに気を引き締め、森川北翔について足早に前方へ向かった。

進んでいくと、前方から口論の声が聞こえてきた。

「川内叔父さん、あなたなんかに何ができるの?特務機関には何の職も持っていないのに、彼らが人を連れて行くのを止める資格なんてないでしょう?」

それは藤原夏菜子の声だった。

川内美玲はすぐに反論した。「パパは特務機関にいないかもしれないけど、今はお爺さんの印鑑を持っているわ!特務機関には昔からの決まりがあって、印鑑を持つ者が部門のすべてを決められるのよ!」

「それは百年前の規則で、今はもう通用しないわ。」藤原夏菜子は嘲笑うように言った。「あなたたち、まだ百年前の時代に生きているの?特務機関は川内家の私物じゃないわ!」

川内亮文は反論した。「どうして通用しないって?四十年前、私の父があなたのお爺さんにこの印鑑を預けて、特務機関の事を決めさせたことがあるじゃないか...当時、あなたのお爺さんは特務機関の一介の職員に過ぎなかった。父が一時的に用事があって、特務機関の管理を任せ、この印鑑を残した。当時の特務機関の全員が、この印鑑があるからこそ、あなたのお爺さんの指示に従ったんだ!あなたのお爺さんもそのおかげで特務機関の副総長になれた。その後、あなたの父が跡を継いだ。この印鑑がなければ、あなたと父親は今日まで来られたと思うのか?」