第618章

川内美玲と別れた後、栗原愛南は駐車場へ向かった。

森川北翔が車の横で彼女を待っていて、尋ねた。「どこへ行く？」

「栗原家へ」

栗原愛南が答えると、二人は車に乗り込み、森川北翔は栗原家へ向けて運転を始めた。

途中、栗原愛南は突然彼を見て尋ねた。「毎日私に付き添っているけど、森川グループはどうするの？」

「心配するな。紀田亮が管理している」

栗原愛南はさらに尋ねた。「じゃあ、海外の会社は？」

「それも上手く処理している」

栗原愛南は我慢できずに口を開いた。「いや、社長として時々会社に顔を出した方がいいんじゃないかなって思って...」

森川北翔は彼女を見ずに前方を見つめたまま、きっぱりと言った。「私を追い払おうとしても無駄だ。半歩たりとも離れるつもりはない」

栗原愛南は一瞬驚き、そして小さく笑った。「見透かされちゃった」

森川北翔は言った。「あなたは狐を追い詰めた。彼女があなたに危害を加えるかもしれないと心配している。私も同じだ」

栗原愛南はため息をついた。「以前、私は南條家を甘く見すぎた。だから姉は事故で亡くなった。今回は...南條家を甘く見るわけにはいかない。狐が追い詰められて私を暗殺しようとしても、どこから攻撃されるかわからない」

彼女は大師姐ではあるが、この世には人を殺す方法が無数にある。

あの時、海浜市で、彼女と姉は誰にも気付かれずにあの船に連れ去られたではないか？

重要なのは、事後でさえ、何の痕跡も残っていなかったことだ。

全ての監視カメラが破壊され、完全に修復不可能だった。

目撃者もおらず、まるで彼女と姉があの個室から船の上に突然現れたかのようだった......

南條家の勢力は、侮れないものだ！

彼女は森川北翔が付き添うことで巻き込まれることを心配していたから、さっき彼を遠ざけようとしたのだ......

森川北翔は言った。「だからこそ、私があなたを守らなければならない」

栗原愛南は一瞬止まった。「おばあちゃんの病気はまだ良くなっていないし...」

森川北翔は直接言った。「愛南、怖くなったのか？」

栗原愛南は一瞬黙った。

森川北翔は口を開いた。「南條家は確かに恐ろしい。でも、戦わずして降伏し、自分を怖がらせてしまえば、それは負けだ」