第629話

藤原夏菜子は直接武闘場に上がった。

彼女は決意に満ちた眼差しでボクシングチャンプを見つめ、背水の陣の気迫を放っていた。

藤原夏菜子は栗原刚弘の意図を誤解していた。

彼女は栗原刚弘の言葉を、たとえ試合に負けて容疑者を国際部に引き渡したとしても、別の方法で容疑者を取り調べることができると解釈していた……

しかし藤原夏菜子の立場からすれば、今日は絶対に南條真美を確保しなければならなかった。

そうでなければ特務機関の面目が丸つぶれだ。

十人もの部下が全員ボクシングチャンプに敗れたとなれば、有利な立場にいながら実利まで失ったと噂されることになる!

実も面子も、今日は一つは守らねばならない!

藤原夏菜子は深く息を吸い込み、ボクシングチャンプに向かって突進した!

しかし、藤原夏菜子とボクシングチャンプは明らかに実力が違いすぎた。藤原夏菜子の拳が相手の顔に届く前に、ボクシングチャンプは身をかわし、彼女の肩に一撃を加えた。