第649話

斎藤愛南は笑いながら続けた。「私たち全員、心が冷たいのよ。あなたのお姉さんも含めてね。お姉さんのことを良く思わないでちょうだい。もし本当に冷たくなかったら、雪音を家で父親と祖母の虐待を受けさせたりしないでしょう?」

栗原愛南は眉をひそめた。

斎藤愛南は続けて言った。「南條家の相続人になる第一歩は、常に正しい選択ができるようになることよ!」

「川内お爺様は多くを犠牲にしたけど、それは彼の選択だわ。もしあなたがお母さんを救いたいなら、今すべきことは、この件に関わらないこと。山田家の大先輩という立場と、さっき藤原部長のところで得た好感を利用して、特務機関での地位を固め、みんなの認知度を上げることよ!」

「私があなたなら、真っ先に唾を吐きに行くわ!そうすれば、すぐに彼らの認めを得られるわ。そんなに心配することないのよ!これは私の経験者としての助言よ。そうしないと、特務機関の認めを得るのは難しいかもしれない。そうなったら、お姉さんと同じように、私に従うしかないわよ!」

斎藤愛南はそう言うと、また鶏の手羽先を食べ始めた。彼女の小さな口は油でてかてかしていて、無邪気で純真そうに見えた。

栗原愛南は画面を食い入るように見つめた。突然、斎藤愛南の目的が分かった。

川内お爺様が冤罪だと知らないと思って、わざわざ教えに来たのは、自分に良心に反する行動をさせ、最初の一人になってもらうためだった。

彼女は意図的だった!

このことを話して、自分が特務機関の好感を得られないようにしようとしている……

栗原愛南は深く息を吸い込んだ。

斎藤愛南は続けて言った。「でも、このコースは合格する人がほとんどいないの。私たちは幼い頃から家族に教育されてきたわ。利己的になって、他人のことには一切関わらないようにってね〜あなたみたいな外見は冷たいけど内面は熱い性格じゃ、それは無理でしょうね!はぁ、可哀想。実は相続人選びに参加する資格すらないのよ!だって、あの人はあなたの親友なのよ!」

そう言って、彼女はくすくすと笑った。「愛南、あなたはどう選ぶの?」

「川内美玲と川内お爺様を守れば、この勝負に負けることになる。守らなければ、勝つチャンスはあるわよ〜」

斎藤愛南は相変わらず笑顔を浮かべていて、それを見た栗原愛南は拳を強く握りしめた。