第648話

彼女は急に川内お爺様が拘束されている部屋を見つめ、眉をひそめた。

一群の人々が一斉に駆け寄り、川内お爺様を引きずり出して、その場に投げ出した。

特務機関の全員が即座に集まってきて、皆が川内お爺様を複雑な表情で見つめていた。

川内お爺様は彼らの元上司であり、憧れの存在だった。

しかし川内お爺様のしたことは、あまりにも彼らを困惑させ、自分たちの人生の追求が全て笑い話のように思えてしまうほどだった！

川内お爺様の功績は、彼らの表彰壁に掲げられており、藤原部長を含む全員が、彼を非常に敬重していた。

皆が彼を誇りにしていたのに、まさかこの定海神針が問題を起こすとは誰が想像しただろうか！

かつて、皆が内密にスパイになる可能性が最も低い人物を投票した時、川内お爺様は圧倒的な差で一位に選ばれた。

しかし実際はこうだったとは……

皆は川内お爺様を見つめ、何か言いたそうにしていたが、その白髪交じりの頭を見ると、言葉が出てこなかった。川内お爺様は幾度となくの任務で彼らを支え、励まし、さらに高齢にも関わらず、何度も危険な任務を遂行してきたのだ！

彼は常に前を向いて進んできた。

このような憧れの存在が、こんなことをするなんて誰が想像しただろうか……

皆はしばし言葉を失った。

川内美玲は急いで一歩前に出て、川内お爺様を支えながら叫んだ：「お爺さん！」

川内お爺様はため息をつき：「お前を巻き込んでしまって申し訳ない。」

川内美玲は目が真っ赤になり、涙が止まらなかった。

彼女は複雑な思いで川内お爺様を見つめていた。

彼女は売国奴が嫌いだった。しかしその人物が自分の身内となると……理性は相変わらず嫌うべきだと告げているが、目の前にいる生身の肉親を前にして……

彼女は思わず声を詰まらせた：「お爺さん！どうしてそんなことを……」

川内お爺様はため息をつき：「私が間違っていた。」

川内美玲は彼を見つめ、力なく立ち尽くした。

川内お爺様は藤原部長の方を向いて言った：「規則通りに、するべきことをしてください！」

藤原部長は老人を見つめ、その目にも複雑な感情が浮かんでいた。

一生敬愛し、二十年恨み続け、今になって川内お爺様がついに失脚し、自分の副総裁の「副」の字もついに外れることになったが、突然虚しさを感じた。