第652話

森川北翔が栗原愛南を山田家まで送る途中、躊躇いながら、不安げな表情で眉をひそめていた。

ついに我慢できずに口を開いた。「山田家に行かなくてもいいんじゃない?」

栗原愛南は一瞬驚いた。「どうして?」

森川北翔は咳払いをした。「山田家は規律が厳しいって聞いてる。この件を知ったら必ず罰せられるはずだ。君に苦労をかけたくないんだ。」

栗原愛南はその言葉を聞いて、思わず笑みを浮かべた。

彼女の目に優しさが宿り、そして溜息をついた。「でも、行かないわけにはいかないの。師匠なんだから。一日の師は一生の父。言うことを聞かなきゃいけないの。」

森川北翔は顎を引き締めた。「わかった。」

彼は前方を見つめながら、もし山田家の掌門が栗原愛南を罰するなら、自分は何をすべきか...どうすれば栗原愛南を罰から守れるのか、と考え込んでいた。