栗原愛南たちは夜に出発した。
船のデッキに立ち、栗原愛南は前を見つめた。夜の海は真っ暗で、底が見えないほどだった。
森川北翔は彼女の後ろに立ち、尋ねた。「怖いか?」
「何が怖いの?」
栗原愛南は問い返した。
この真っ暗な海は、彼女の光の見えなかった過去の人生のようで、何も怖くなかった。
森川北翔は淡々と言った。「ここからA国の国境まで約4時間だ。海上では電波が通じず、衛星電話しか使えない。さっき連絡が入って、藤原明正先生がすでに出発したそうだ。我々が到着しても危険はないはずで、すべてが順調なら、藤原明正先生を迎えて即座に帰国できる。」
栗原愛南は頷き、さらに尋ねた。「もし順調じゃなかったら?」
「その時は計画Bがある。安心してくれ、今回は必ず藤原明正先生を連れ帰る!」森川北翔の声は重みがあり、人に安心感を与えた。