電話はすぐに繋がった。
広石秋子の声が聞こえてきた。「元碩、どうしたの?用事は済んだの?」
森川元碩は直接切り出した。「済んだよ。迎えに来てくれないか?」
「迎えに行く?どうしたの?結果はどうだったの?」広石秋子の声は焦りに満ちていた。
森川元碩はほっと胸をなでおろした。
先ほど森川北翔と藤原美里に疑われた時、森川元碩は確信に満ちた口調で話していたものの、心の中では不安を感じていた。
しかし今、広石秋子の焦りが彼に安心感を与えた。
森川元碩は低い声で話し始めた。「森川北翔に家を追い出されたんだ。でも心配いらないよ、秋乃。私たちはまた這い上がれる!」
「えっ?森川北翔ってひどすぎるわ!元碩、這い上がるって、どういう意味?何か切り札があるの?」
「そうさ、この何年間もビジネスの世界で無駄に過ごしてきたわけじゃない。人脈もあるし、リソースもある。君が資金を出してくれれば、いつか必ず成功できる」
広石秋子は一瞬黙った。「私が資金を出す?どんな資金?」
森川元碩は一瞬固まった。「この何年間、私が君にあげたお金だよ!」
広石秋子はすぐに答えた。「ああ、そのお金のことね。森川北翔があなたを追い出して、一銭も渡さないなんて、本当にひどいわ!」
「そうだよ、ひどすぎる!」
「じゃあ、お父さんは?何て言ってたの?」
「そんなことは聞かないでくれ。まず迎えに来てくれ!お父さんのことは、会ってから話そう」
「わかったわ、少し待っていて」
広石秋子はそう言って、電話を切った。
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京都のある高級マンション。
広石秋子は電話を切ると、焦りながら森川麻理亜の方を見た。「お父さんが家を追い出されたわ。もし私たちが彼を引き取ったら、私たちまで巻き込まれることになるかしら?」
森川麻理亜はすぐに答えた。「お母さん、慌てないで。状況を確認してみます」
そう言うと、彼女は携帯電話を手に取り、電話をかけ始めた。
一通り電話をかけ終わって戻ってきた森川麻理亜の顔には恐れの色が浮かんでいた。「お母さん、今、森川北翔が業界内で言いふらしているそうよ。誰でもお父さんと取引したり付き合ったりすれば、森川家とは関係を絶つって!今、私たちが彼を引き取れば、必ず影響が出るわ!」