第750章

栗原愛南が必死に人を救おうとしたのは、まず森川北翔が改造した車が普通の車より安全だと確信していたからだ。次に二人の命を救うためであり、そして小島愛絵と小島早絵の車を保全し、この事故が事故なのか人為的なものなのかを確認するためだった。

正直なところ、今でも南條家の件について疑問を抱いている。

幼い頃から現在まで生きてきて、個人の認識が深まり、科学分野でも一定の成果を上げた彼女は、この世界に宇宙人がいると信じても、玄學は信じない人間だった。

幽霊や神の話など、すべてたわごとだと思っていた。

しかし今日の事故は、斎藤愛南の言葉を証明し、南條家の予言には確かに何かがあることを示していた……

だが本当に予言のせいなのか?それとも南條家が自分たちの予言能力を証明するために仕組んだ人為的なものなのか?

栗原愛南は以前、海浜市で姉の愛南と出会った直後に、南條家の人々に気絶させられて連れ去られ、海に投げ込まれ、姉を死なせてしまった。

後に森川北翔と調査した際、すべての監視カメラの映像が削除されており、その事件の痕跡はすべて消されていた。

これは南條家の影響力の大きさを十分に物語っている。

だから南條家は、すべての予言を実現させる能力を持ち、それによって世界中の人々を威圧する、そんな組織なのではないだろうか。

栗原愛南の腕には擦り傷があったが、彼女はまるで気づいていないようだった。

小島愛絵は彼女が素早く近づいてくるのを見て、足を止めた。

栗原愛南は尋ねた:「どう?」

小島愛絵は答えた:「私と早絵は大丈夫です。」

「……車のことを聞いているんだけど。」

小島愛絵:「……」

小島愛絵は目を伏せて:「車は前部が衝突しただけで、ブレーキパッドは問題ないはずです。」

「それならよかった。」

栗原愛南は簡潔に言い残すと、すぐに車の前へ駆け寄った。

駆け寄ったところで、小島早絵も車から這い出してきて、栗原愛南を見るなり興奮して彼女の手を握った:「恩人、あなたは私と兄の命の恩人です!私たちを救ってくれてありがとうございます!」

しかし栗原愛南は彼女を避けて、車の中を調べようとした。

突然、手首を森川北翔に掴まれ、栗原愛南は驚いて振り返ると、森川北翔が言った:「私が調べる。」

「わかった。」