第754章

大勢の人々がどやどやとバーに向かった。

そう、朝早くから、みんなバーに行ったのだ。

小島早絵が追いかけていた男がバーにいたからだ。栗原愛南が入店した時、その男は隅のボックス席で女の子を抱きしめていた。

彼女は斎藤愛南と目を合わせ、二人同時に小島早絵を見た。

これで小島早絵もこのクズ男を諦められるだろう?

だって、こんなに遊び人で...外に他の女もいるのに...

しかし意外にも、小島早絵はまるで見慣れた光景のように、すぐに口を開いた:「彼が抱きしめている女の子は彼の彼女で、万由香っていうの」

栗原愛南:?

斎藤愛南は口角を引きつらせた:「つまり、相手に彼女がいるのに、まだ追いかけてるの?」

小島早絵は俯いた:「彼は私のことも好きだって言ってくれたの。それに彼女がいても妻がいるわけじゃない。彼は万由香を見捨てられないだけで、責任を取らなきゃいけないだけなの。将来は私と結婚してくれるって...」

栗原愛南:「...」

斎藤愛南は驚愕した:「つまり、小島家のお嬢様が愛のために不倫相手になるってこと?」

小島早絵は言い返した:「不倫相手になるわけじゃないの、私はただ...」

彼女は言葉を続けられなかった。

自分のしていることが間違っているのは、自分でもわかっていたから!

でも不思議なことに、高橋修のことを諦めようと思うたびに、高橋修が彼女のところに愚痴りに来るのだ...

自分がどれだけ辛いか、あの子が彼のためにどれだけ犠牲を払い、どれだけのものを諦めたか...

彼はもうあの子を愛していないのに、あの子に対しては責任感だけなのに、それでも見捨てられないのだと。

彼は自分に申し訳ないと言い、でも万由香を見捨てられない、愛してはいけないとわかっていながら愛してしまった...そして小島早絵は優しいから、きっと他人の恋を壊したりしないだろうし、小島早絵に人の恋を壊した悪名を着せたくないとも。

そんな時、小島早絵はすぐに心を痛めて彼を慰め、焦らなくていいと言い、彼と一緒にいることを大切にしようと...

そして小島早絵は、彼らに車や家やお金を提供するのだった...

小島早絵の話を聞いて、斎藤愛南は呆れ果てた。彼女は目を転がして言った:「彼はあなたを騙してる、PUAしてるのよ。気づかないの?」