第752章

栗原愛南と森川北翔はすぐに小島家に到着した。

電話では説明しきれないことがあり、直接会えば栗原愛南と森川北翔はより容易に手がかりを見つけられるだろう。

あ、違った。斎藤愛南というお邪魔虫もついてきていた。

彼女はひまわりの種を食べながら、森川北翔に尋ねた。「小島家の事故の真相を調べに行くんじゃなかったの?どうして今日もここに来たの?」

昨日、森川北翔は一緒に来なかった。栗原愛南と別行動を取り、周辺を監視して南條家の誰かが来ないか見張るためだった。

彼はドローンまで起動させ、ハエ一匹でも小島家に入れば察知できるようにしていた。

今日も本来なら栗原愛南と連携を取るはずだったのに、なぜか森川北翔は一緒に来ることを主張した。

森川北翔は斎藤愛南を無視した。

斎藤愛南はニヤニヤ笑って続けた。「黙っていても、あなたの下心は分かってるわよ?誰かが狙われるのを心配してるんでしょ!」

森川北翔は彼女を冷ややかに一瞥した。

斎藤愛南は顎を上げ、全く怖がる様子はなかった。

不思議なものだ。

森川北翔という人物は気まぐれで、外見は人を威圧するような雰囲気がある。

対して栗原愛南は常に落ち着いていて、容姿も絶世の美人だが、攻撃性は微塵もない。

しかし斎藤愛南は不思議と森川北翔を怖がらず、栗原愛南だけを恐れていた。

森川北翔が今にらみつけても、彼女は舌を出して反抗的な態度を取るのに、栗原愛南がちらりと見るだけで、斎藤愛南はすぐに大人しくなった。

この様子は……

森川北翔の瞳に深い色が宿った。

彼が考えに耽っている間に、車は駐車場に停まり、三人は小島家の応接室に到着した。

普段は冷淡で欲望を持たない仏のような小島愛絵は、いつものようにソファに座って客を待つのではなく、珍しく玄関の外に立っていた。

栗原愛南が来るのを見ると、彼の瞳に光が宿り、何か言おうとしたが、高い人影が栗原愛南の横を通り過ぎて「小島さん、こんにちは」と声をかけた。

小島愛絵はそこで初めて森川北翔に気付いた。

男の周りには野獣のような気配が漂い、自分の縄張りを主張するかのように、その目は鋭く凶暴だった。

小島愛絵は一瞬躊躇し、栗原愛南に差し出そうとした手を森川北翔の手に握らせた。「森川さん、こんにちは」

それから栗原愛南の方を向いて「栗原お嬢様、こんにちは」と言った。