第774話

栗原愛南が電話を受けた時、少し戸惑った。

木村家は小島愛絵からの連絡を受けた直後に彼らに連絡を取り、協力したいと言ってきた。なのに、小島愛絵がまた電話をしてきたのは何故だろう？

もしかして、自分が彼を利用したことに気付いたのだろうか？

栗原愛南はそう考えながら、咳をして、森川北翔を見た。

正直に言うと、初めて人を利用するのは少し後ろめたかった。

森川北翔はその様子を見て、彼女から携帯を取り上げ、ちらりと彼女を見た。言葉は発しなかったが、その眼差しには明らかなメッセージが込められていた：そんなに気が小さいのか。

明らかに、森川北翔はビジネス界の古株だった。

彼は平然と電話に出ると、小島早絵の声が聞こえてきた：「愛南お姉さん、私と兄のために大変お世話になりました。私たち家族でお伺いして、以前の誤解も解きたいと思うのですが、よろしいでしょうか？」

森川北翔の携帯はスピーカーモードになっていたので、栗原愛南ももちろん聞こえていた。

彼女が眉を上げて何か言おうとした時、どこからともなく現れた斎藤愛南が栗原愛南の後ろに突然現れ、すぐに叫んだ：「お断りよ！」

小島早絵はすぐに言い返した：「愛南お姉さんに聞いているのよ。あなたに聞いているんじゃないわ！」

斎藤愛南は口を尖らせた：「愛南お姉さん...まあ、いつの間にあなたと私の姉がそんなに親しくなったの？」

「あなたの姉？あなたは斎藤家の人でしょう。愛南お姉さんとどんな関係があるの？」

斎藤愛南は嘲笑した：「彼女は愛南、私も愛南。どんな関係かわかるでしょう？」

「...」小島早絵は一瞬躊躇した後、すぐに叫んだ：「愛南お姉さん、明日のお昼に、私たち家族でお伺いさせていただきます！」

そう言うと、斎藤愛南が断る機会を与えずに、電話を切った。

斎藤愛南は鼻を鳴らし、栗原愛南を見つめた：「なんて無礼な人なの！私たち主人側が承諾してないのに、誰が来ていいって言ったの？」

栗原愛南は遠回しに注意した：「...ここは確か森川家よね？」

斎藤愛南は理屈が通らないことを知りながらも強気に：「それがどうしたの？あなたは森川さんと結婚したんだから、ここはあなたの家でしょう？あなたの家は私の家じゃない？南條家の血縁関係から見れば、あなたは私の従姉よ！」

栗原愛南は額を押さえ、少し呆れた様子だった。