高橋修はその言葉を聞いて、呆然としてしまった。
彼は困惑して栗原愛南を見つめ、なぜ彼女がそう言うのか理解できなかった。「9時55分って何のこと?僕には、君の言う意味がよく分からないんだけど……」
栗原愛南は即座に尋ねた。「つまり、あなたが彼女を誘い出した時、なぜ9時55分だったの!」
高橋修は自分でも混乱していた。「僕が9時55分に彼女を呼び出したの?知らなかったよ?」
そう言いながら、彼は自分の携帯を取り出し、通話履歴を確認すると、確かに9時55分に電話をかけていたことが分かった。
彼は自分でも理解できない様子で言った。「ただ何となく電話したんだよ。時間なんて気にしてなかった。」
彼の様子は、嘘をついているようには見えなかった。
しかし念のため、栗原愛南は斎藤愛南の方を見た。
斎藤愛南はすぐに尋ねた。「なぜ私を見るの?」
栗原愛南は「彼も催眠術をかけられているか確認してみて。」
「はい。」
斎藤愛南は一歩前に出て、高橋修の瞳孔を確認し、首を振った。「違います。」
栗原愛南は眉をひそめた。「じゃあ、どういうことなの?」
手掛かりがここで突然途切れたようだった。
そのとき、森川北翔が入ってきて、彼女に携帯を渡した。この間に彼は既に高橋修の経歴を調査させていたのだ。
この履歴書には、彼が幼い頃どこの幼稚園に通っていたかまで詳細に記されていた。
これを見ると、高橋修は確かに普通の人間で、小さな農村出身の子供で、幼い頃は真面目に勉強し、家族の支援で大学まで進学した学生だった。
ただ大学で、今まで見たことのない世界を目にし、突然外の贅沢な生活に目がくらみ、学校で金持ちの女性と付き合い始めた。
そして小島早絵に目をつけるまで。
命がけで彼女を救ったというのは、全て嘘だった!
命がけなんて全くなかった……
これは全て彼と友人が仕組んだ芝居に過ぎなかった……
上には詳細に書かれており、高橋修と友人との会話まで調査済みで、その後高橋修は徐々に小島早絵を精神的に支配し、彼女の限界を探っていった。
小島早絵が自分に無限の寛容さを示すことを発見した後、外で遊び歩き始め、鈴木万由香と知り合った。