第767話

電話を切ると、小島早絵は皆の方を見た。

小島愛絵は相変わらず冷静な表情で、何も言わなかった。明らかに何が起きたのか理解していた。

斎藤愛南はにこにこしながら口を開いた。「相手はもう辞めてたんでしょう？」

小島早絵は落ち込んで頷いた。「はい、店長が言うには、半年前に家庭の事情で急に辞めて帰ったそうです。私...高橋修と付き合ってからは、あのマッサージ店にほとんど行かなくなって...こんなことも知らなかったなんて。でも店長から彼女の身分証明書の情報をもらいました。お兄ちゃん、調べてくれる？」

小島愛絵は目の前の純真な眼差しの妹を見て、軽くため息をついた。

栗原愛南と斎藤愛南を見てみると...

栗原愛南は毅然とした眼差しで、すべてを理解しているような様子だった。しかもこの女性は手段を選ばない厄介な相手だ。

斎藤愛南については...この女性はさらに不可思議で、純粋で無害そうに見えるが、することなすこと全て小悪魔のよう。彼女の表情からは、すべてを知り尽くしているのが見て取れた。

自分の妹だけが、本当に何も分かっていないのだ！

小島愛絵は手首の数珠に触れながら、冷静に言った。「調べる必要はない。その情報は間違いなく偽物だ。何も分からないはずだ」

小島早絵は驚いた。「そんなはずない？あれは身分証明書で...」

ここまで話して、ようやく小島家の血が騒ぎ、状況を理解し始めた。彼女は驚愕して言った。「つまり、その身分証明書は偽造されたものってこと？」

小島愛絵は頷いた。

小島早絵は呆然と前を見つめた。「じゃあ、なぜ私を催眠にかけたの？私と彼女には何の恨みもないはずなのに...それに高橋修とは、彼女はどういう関係なの？」

栗原愛南は少し考えてから「高橋修に聞いてみれば、何か手がかりが得られるかもしれない」と言った。

相手が小島早絵を催眠にかけ、高橋修の言うことを聞くようにさせたのは、ただあの朝10時に出かけて小島愛絵を轢き殺すためだけだったのか？

こんなに大がかりな計画を立て、3年半前から仕掛けていた...

これは南條家の仕業なのか？

栗原愛南は顎を引き締めた。どうあれ、少なくとも今は、あの所謂南條家の予言が確かに人為的なものだということが分かった...

まったく収穫がないわけではない。