第791章

森川北翔はすぐに見やり、眉をひそめ、不機嫌そうに沢田南彦を見た。

一種の危機感が突然心を襲った!

栗原愛南は沢田南彦をじっと見つめていた。

こんなに美しい顔、自分は見たことがないはずはない……

彼女が考えていると、沢田南彦が口を開いた。「花香亭、5号個室」

この言葉に、栗原愛南は固まった。

彼女は信じられないという表情で沢田南彦を見つめ、上から下まで何度か視線を走らせてから、ようやく彼を放した。

男性が彼女に解放されるとすぐに咳き込み始め、森川北翔はそれを見て部下の手も放した。部下はすぐに駆け寄り、「ご主人様、大丈夫ですか?」

沢田南彦は手を振り、力なくソファに座り込んだ!

森川北翔は困惑して栗原愛南を見た。「彼を知っているのか?」

栗原愛南は沢田南彦を観察し、上から下まで見回した。「あなたが5号個室の沢田さん?」

沢田南彦はすぐに目を輝かせ、微笑んだ。「そうです」

栗原愛南:「……」

森川北翔は咳払いをして、尋ねた。「どういう関係なんだ?」

栗原愛南が話す前に、沢田南彦の従者がぺらぺらと全て話し始めた。「私たちのご主人様は幼い頃から拒食症で、何を食べても好きになれず、とても痩せていました。当時身長180センチで体重わずか45キロ、骸骨のようでした。沢田家は世界中で彼が食べられる食べ物を探し、5年前にようやく海浜市の花香亭でシェフの料理を食べたとき、ご主人様は自分に合った味を見つけたのです!それ以来、毎週通い、少しずつ太ってきて、ついに60キロになりました。しかし4ヶ月前、花香亭のシェフが突然姿を消してしまったのです!」

その従者は栗原愛南を見た。「花香亭の人々にシェフと店主が誰なのか尋ねましたが、彼らは何も言いませんでした。大変な苦労の末、ようやく森川奥様だと知りました…そして私たちのご主人様は、栗原お嬢様が4ヶ月前に海に落ちて亡くなったと聞き、これでもう料理を作る人がいなくなり、ご主人様は飢え死にするのではないかと心配しました」

「その後、森川家に行って栗原お嬢様が残した万能調味料のようなものがないか探そうとしましたが、森川さんが森川奥様に一途な愛情を持っていて、葬儀でさえ奥様の死を認めず、奥様の事故の後、京都に来てからは帰らなくなったと聞きました」