第799章

橋本南は足を止め、振り返って笑った。「どうした?私を行かせたことを後悔してる?」

話したのはまさに栗原愛南だった。

栗原光雄も急に振り返り、栗原愛南を見た。

栗原愛南は彼らを見つめながら、ゆっくりと言った。「私はただ、あなたたち二人には別れの挨拶が必要だと思っただけよ」

この言葉に、栗原光雄と橋本南はすぐに視線を合わせ、そしてすぐに目をそらした。

栗原愛南はそれを見て、微笑みながら二人の間に歩み寄った。「橋本南、実はあなたは私の五兄を好きなんでしょう?」

橋本南は一瞬固まった。

栗原光雄も動きを止めた。

栗原愛南はゆっくりと続けた。「もし好きじゃないなら、さっきあなたが彼に私とあなたの間で選ばせようとしたとき、彼があの質問をした時、あなたの答えは『好き』だったはずよ。あなたが彼を好きなら、彼は私を捨ててあなたを選ぶ可能性があるのに、あなたはその答えを避けた」

彼女は直接橋本南を見つめた。「なぜ?」

橋本南:「ただ嘘をつきたくなかっただけよ」

栗原愛南:「いいえ、あなたは栗原光雄を困らせたくなかっただけよ」

彼女は言い終わると栗原光雄を見た。「五兄、彼女は実はあなたのことが好きなのよ」

栗原光雄:「……」

橋本南は顎を引き締めた。「今そんなことを言って何になるの?彼を困らせるだけじゃない」

栗原愛南は言った。「ライオン、あなたは一つの問題を考えたことがある?本当に後継者の座を勝ち取れると思う?」

橋本南は一瞬止まり、唇を噛んだ。

栗原愛南は目を伏せ、ゆっくりと口を開いた。「あなたたちが各国に送られたのは、20年前だったでしょう。その時は実力に応じて国が割り当てられたはずよ。A国は今はもちろん、20年前でさえ小国に過ぎなかった。つまり、あなたが争えるものはそれほど多くなく、あなたの実力はそれほど強くないということではないの?」

橋本南は拳を握りしめた。「それで?」

栗原愛南は口を開いた。「あの頃は誰も日本が経済大国になるとは思っていなかった。だからウサギのこちら側が逆に人気の的になって、あなたたちは皆ここで一口食べたいと思った。でも今、実際に日本でその一口を食べられた人は何人いる?」