午前9時、スカイ・エンターテインメントの会議室で、冬島翼はこの度の雨野柔子と天野奈々のアメリカでのSecretの雑誌撮影について、簡単な日程の手配をしていた。
冬島翼が主席に座り、天野奈々と雨野柔子がそれぞれ冬島翼の左右に座っていたが、立場に大きな変化があった。雨野柔子は小三として順調に地位を得て、正妻を脇に追いやり、彼女は厚かましくも冬島翼と会議テーブルの上で目配せし合っており、その場にいる関係者たちも見ていられない様子だった。
小林真弓は横目で天野奈々を見た。プロジェクターの下で彼女の表情は不明瞭だったが…小林真弓には分かった。今、彼女の目の底では、完全に雨野柔子と冬島翼を遮断していた。
これもまた小林真弓が天野奈々を尊敬する点だった。心の中がどんなに辛くても、人に深浅を見せることはなく、さらに人に彼女を侮辱する機会を与えることもない。
「今回のSecretの撮影は、私が直接アメリカに同行します。通訳も同行させますが、数日間一緒に過ごすことになるので、事前に馴染んでおく必要があります。仕事の進行に影響が出ないように」冬島翼は言いながら、Secretの資料を二人に渡した。「Secretは20年前に設立され、かつてアメリカで一世を風靡しました。近年は衰退の兆しがありますが、その影響力は侮れません。今回、彼らがアジアのモデルを招待した目的は、東洋ブームを利用して自らの再起を図ることです…だから、あなたたちの任務は非常に困難です!」
「柔子はファッションの把握がより正確なので、天野奈々、今回は彼女の意見をよく聞いて、彼女を主として…」
この言葉が落ちると、会議室全員が理解した。冬島翼は天野奈々を補助役にして、雨野柔子の引き立て役にさせようとしているのだ。
中村さんは雨野柔子の眉毛が飛び上がりそうな様子を見て、歯ぎしりするほど憎らしく思った。
「翼、安心して。私はあなたを失望させませんよ!」
天野奈々には反論の余地がなかった。ただ立ち上がって、小林真弓と中村さんに向かって言った。「私たち、行きましょう…」
「天野奈々、どういうつもりだ?」