午前9時、スカイ・エンターテインメントの会議室で、冬島翼はこの度の雨野柔子と天野奈々のアメリカでのSecretの雑誌撮影について、簡単な日程の手配をしていた。
冬島翼が主席に座り、天野奈々と雨野柔子がそれぞれ冬島翼の左右に座っていたが、立場に大きな変化があった。雨野柔子は小三として順調に地位を得て、正妻を脇に追いやり、彼女は厚かましくも冬島翼と会議テーブルの上で目配せし合っており、その場にいる関係者たちも見ていられない様子だった。
小林真弓は横目で天野奈々を見た。プロジェクターの下で彼女の表情は不明瞭だったが…小林真弓には分かった。今、彼女の目の底では、完全に雨野柔子と冬島翼を遮断していた。
これもまた小林真弓が天野奈々を尊敬する点だった。心の中がどんなに辛くても、人に深浅を見せることはなく、さらに人に彼女を侮辱する機会を与えることもない。