「一体どうやって入ったの?」冬島雪はTQの編集長に面目を失い、今は尻尾を巻いて入場するしかなく、穴があったら入りたい気分だった。
冬島翼は数人の前を歩く天野奈々を見つめ、複雑な表情を浮かべた。「彼女は最初から知っていたんだ。私たちが招待状を破り捨てたことを。だから私たちがどんなに警戒しても、天野は陰で私たちの一挙手一投足を注視していたんだ」
「彼女がそんなに賢いわけないでしょ」冬島雪は冬島翼の無能さを責めた。「見ていなさい。今日彼女を止められなかったら、これからはもっと止められなくなるわよ」
雨野柔子は隣にいる兄妹、特に自惚れの強い冬島雪を見て、目に嘲りの色を浮かべた。天野奈々が賢すぎるのではなく、みんなが天野を過小評価し、警戒を緩めてしまったのだ。彼女自身も含めて…
でも、天野奈々がどんなに必死に這い上がろうとしても構わない。年間トップ10の賞を持ち去る方法があるなら、天野に勝つ勝算もあるはずだ。
結局のところ、彼女はすでに裏取引の甘い果実を味わっているのだから。
数人が入場する際に大きな騒ぎを起こしたこと、スカイ・エンタメが天野奈々を押さえつけようとして失敗したことは、すぐに会場中に広まった。冬島翼は客たちの嘲笑的な視線を見て、怒りを必死に抑えた。その後、彼らは自分たちの席を見つけた。業界での地位に応じて、彼らの席は中央よりやや後ろにあり、一時的に人々の視線を避けることができ、ほっと一息つけた。しかし、彼らが予想もしなかったのは、天野奈々の席がステージに近い2列目だったことだ。
左側にはTQの編集長が座り、右側には年間モデル選考の審査員が座っていた。そして、その男性こそ、雨野柔子が取り入った相手だった。
なぜ天野奈々はいつもこんなに運がいいのか?
天野奈々がその人物と親しくないにもかかわらず、雨野柔子はそれでも動揺を感じていた。なぜなら、彼女には後ろめたさがあったからだ。
「柔子、どうしたの?手のひらが汗だらけだよ」
「大丈夫よ、ちょっと緊張しているだけ」雨野柔子は冬島翼に適当に微笑んだ。
輝く夜は、年間モデル選考の授賞式の開幕式でもあった。会場には有名人が集結し、スーパースターが勢揃いしていた。ファッションに興味のある芸能界の人々も多く、出席者も少なくなかった。