「あのモデル、もしかして、東洋トレンドで大ブレイクした子?」
「そうよ。ちょっと可愛いからって調子に乗って、悪知恵を働かせ始めたのよ。誰も彼女に教えなかったの?うちの社長は、他人を利用して出世しようとする人が大嫌いだって。まして彼を利用して話題作りするなんて、あまりにも生き恥をさらしているわ」
「面白いことになりそうね…」
「小物のくせに、図々しいったらありゃしない…」
客席からは、こそこそと囁き声が絶えず聞こえてきた。その場にいる全員が、天野奈々がどのように辱められるのか、どれほど悲惨な目に遭うのかを見届けようと待ち構えているようだった。これに冬島翼たちは、思わず喜びを感じずにはいられなかった。
もし天野奈々が海輝の社長の怒りを買えば、それは業界全体からの追放に等しい。彼らが天野奈々を抑え込むためにどんな手段を講じるよりも効果的だ。これは予想外の幸運だった。