冬島翼がホテルを出た後…重たい体を引きずりながら、絶え間なく流れる街を歩き回った。裏切られるというのは、こんな味なのか。恥辱、屈辱、羞恥、崩壊。千の味が絡み合って網を作る。
彼は雨野柔子のために全てを捨てた…
天野奈々をも使い果たした…
そして得たのはこんな結末。現場を押さえられた!ベッドの上で!彼の真心からの尽くしは、雨野柔子にとっては単なる場を繕うだけのものだったのか…
ふん…
そういえば、天野奈々が当時彼と雨野柔子の不倫を発見したときも、こんな気持ちだったのか。雨野柔子を粉々にしたい、皮を剥ぎ筋を抜きたいと思っても、それでも恨みは晴れない。なぜなら、それは彼の尽くし、彼の青春だったから。
雨野柔子のために、彼は天野奈々を捨て、冬島雪を見捨て、全てを捨てた。必死に上を目指したのに、得たものは雨野柔子が他人とベッドで戯れることだった。