翌朝、冬島翼と雨野柔子がオフィスに入ると、冬島翼のデスクには多くの誕生日プレゼントが置かれていた。雨野柔子はそれを見て、自分が冬島翼の誕生日を忘れていたことに気づいた…
これまでの冬島翼の誕生日には、彼女はいつも奇抜なアイデアを出し、あの手この手で冬島翼を引き留め、天野奈々をバカみたいに待たせていた。しかし、今は昔とは違う。不倫の喜びを味わった後、雨野柔子は自分がもう後戻りできないことに気づいた。
「翼、最近体調が悪くて…だからプレゼントも用意できなかったの」雨野柔子は自ら冬島翼の肩に手を回し、細い指で彼の胸元を撫でた。これが冬島翼の弱点だと知っていたからだ。
案の定、冬島翼は彼女の右手を握り、寛大さを示した。「分かってるよ、妊娠中は大変だろうけど、今夜はちゃんと埋め合わせてもらうからね…」
甘い言葉が雨野柔子の耳に響き、冬島翼の熱い吐息が彼女の耳たぶに当たった。雨野柔子は恥じらいながらも微笑んで、頷いた。「うん…」
数年の感情があるため、完全に無関心になることはできない。ただ…天野奈々がこの機会を利用して冬島翼を取り戻そうとするかもしれないと考えると、彼女の心に傲慢な気持ちが芽生えた。
たとえ自分が彼を手放したとしても…
天野奈々に取り返させるわけにはいかない!
だから、木下さんとのデートをキャンセルして、今夜は冬島翼とゆっくり過ごすつもりだった。
「翼、この山のプレゼントの中に、天野奈々のものが混じってるかしら?」
実は、冬島翼も同じことを考えていた。天野奈々は…まだ彼の誕生日を気にかけているだろうか?以前はこの日、天野奈々はいつも心を尽くして彼のプレゼントを用意していた。しかし、彼はいつも雨野柔子のそばにいて、天野奈々を一晩中待たせていた。あの頃は、天野奈々は一生このままだと思っていた。永遠に彼の手のひらで転がされるだけだと…
「見てみるよ…」雨野柔子は天野奈々を辱めようと決意し、プレゼントの山をあちこち探し回った。最後にがっかりして、「あの女、学習したみたいね。でも翼、私たち、会社の同僚とみんなで食事するのも久しぶりよね。昼に…天野奈々も呼んでみない?」
冬島翼は彼女の目的を理解し、眉をひそめたが、それでも頷いた。「君から電話してくれ」