第104章 禍を他に転嫁する

翌朝早く、中村さんは山田旭の完全な資料を持って、コーヒーショップでパパラッチの従弟と秘密裏に会った。従兄弟二人は、一人は陸野、もう一人は冬島という姓だった。陸野は前回中村さんを恐喝したパパラッチで、目の前にいる小柄な男の従兄でもあった。

男は冬島保と言い、黒いプリントTシャツを着て、下はダメージジーンズを履いていた。髪型はスタイリッシュにセットされており、明らかに享楽派の人間だった。中村さんを見ると、サングラスを外し、眉を上げて言った。「俺を呼び出したのは何かあるのか?」

中村さんは相手が天野奈々の黒い記事を出す準備をしていることを知らなかったので、すぐに本題に入った。「もし儲かる取引があると言ったら、お兄さんに内緒で単独でやる勇気はある?」

「どれくらい儲かるんだ?」

「あなたたち兄弟は、うちの天野奈々のことをよく知っているはずよ。頑固だから、真っ黒に塗られても自分のために金を使って洗浄しようとはしないわ。本来なら、この資料を手に入れたら直接公開できたはずよ。天野奈々も私に全権を委任したわ。でも、ベッドスキャンダルの黒幕のことを考えると、うちの天野奈々が冤罪で苦しんでいると思うと辛くて。だから、あなたと協力したいの。資料は無償で提供するわ。第一に天野奈々の潔白を証明するため、第二に、あなたに唯一のお願いがあるの。それは、この資料がオレンジフィールドエンターテインメントの山田静香からもらったものだと対外的に主張することよ」

冬島保はそれを聞いて、天野奈々がこの件の内情を知っていたのかと思った。そして疑問を抱きながら中村さんから資料を受け取った。驚いたことに、山田旭に関する資料がさらに詳細で、女優の名前や写真まで含まれていた。

彼と兄が盗撮したものは、多くが確実な証拠ではなかったが、この資料は iron-clad evidenceだった。

冬島保は中村さんがこれほどの誠意を示したのを見て、自分も本音を明かした。「実は、山田静香が天野奈々の黒い噂を流す準備をしているんだ。PSで作った寝室の写真を使って、天野奈々と山田旭のベッド写真だと中傷するつもりだった。昨日の夜、あなたからの電話がなければ、天野奈々はまた話題の的になっていたところだ」

中村さんはそれを聞いて、心の中で驚いた。幸いにも...