同じ時間に、桐山保は兄が気づかないうちに、用意しておいた別の原稿を天野奈々の「スキャンダル写真」の暴露記事と入れ替えた。
メディアが騒ぎ出すまで、桐山駿は弟が送り出した暴露ネタが、「天野奈々ベッド潜入の鉄証」というタイトルの記事ではなかったことに気づかなかった……
代わりに「衝撃の闇、ベッドスキャンダルに新たな証拠!」と変更されていたのだ。
桐山保は賢明にも天野奈々の名前を出さなかった。これは中村さんとの約束だった。ネットの大衆は天野奈々が関与していないことを知るだけでよく、彼女を風当たりの強い立場に追い込む必要はなかった。
この記事には、山田旭の外出の証拠やモデルたちとの不適切な関係を示す写真が大量に掲載され、関係した女優たちの名前はすべて頭文字のみに置き換えられていた。
さらに注目すべきは、桐山保がこの情報がある果物系芸能事務所のYという姓のマネージャーから入手したと暗に示唆したことだ。これは事実上、その人物が山田静香であることを全ての人に告げるようなものだった。
桐山駿は激怒して桐山保のパソコンを壊しそうになったが、桐山保は不敵な笑みを浮かべながら桐山駿に挑発的に言った。「兄貴、怒るなよ。どうせなら金もらったし、1割分けてやろうか?」
「誰がお前にそんな大胆なことをする勇気をくれたんだ?」桐山駿は激怒して机を叩き、目に宿った怒りは桐山保を焼き尽くしそうなほどだった。
「もし兄貴が俺にちょっとでも公平に接してくれていたら、俺もこんなことしなかったさ。今は、山田静香に目をつけられるのを待っていればいい」そう言うと、桐山保はキーボードを投げ出し、二人の小さな作業室を出て行った。
桐山駿は、天野奈々の手口がこれほど巧妙だとは夢にも思わなかった。一手で禍を転じさせ、山田静香とベッドを使って賞を手に入れたモデルたちを互いに争わせただけでなく、彼と弟の関係も決定的に決裂させた。しかし、今やニュース原稿は既に送信されてしまい、たとえ阻止しようとしても手遅れだった……
最初から天野奈々に敵対するべきではなかった!
もし彼が天野奈々を恐喝していなければ、今のような状況にはならなかっただろう。金は手に入らず、かえって厄介な事態を招いてしまった!
……