第185章 伝説の人物

実際、華栄スタジオのそのジャーナリストもショーに来ていて、彼は一躍有名になれるアーティストを探し続けていた。

天野奈々はずっと控えめで清廉潔白な印象で知られていたが、前回アメリカで天野奈々と男性が親密に別れを告げる場面に遭遇して以来、彼の心に深い印象を残していた。今回ロンドンに来て、彼は必ず天野奈々とその男性の親密な関係を撮影し、証拠を掴めると信じていた。

もちろん、先ほどのパパラッチが天野奈々に向かって猛烈に撮影し続けた行為に対して、彼は軽蔑の念を示した。

太ももを触られただけのようなネタ。

低級な話題作りにしか使えない!

彼が撮りたいのは、天野奈々と男性が絡み合う決定的な証拠だった。だから彼のホテルの部屋は、天野奈々の向かい側にあった。

……

ロンドンの11月は、東京ほど寒くなく、コートひとつあれば十分防寒できた。

ホテルに戻る途中、天野奈々は目を閉じて休んでいた。中村さんは彼女の前にしゃがみ込んでマッサージをし、心配そうに彼女のふくらはぎをつまんだ。

長時間ハイヒールを履いていたため、天野奈々の脚の筋肉は本当に張っていた……

ホテルの地下駐車場に入ったとき、安藤皓司が先に車を降りた。黒いコートを着て斜めにスポーツカーに寄りかかっている墨野宙を一目見たとき、彼は思わず立ち尽くした。

天野奈々はすでに眠っていた。続いて中村さんが車から飛び降り、天野奈々を起こそうとしたが、墨野宙は「シーッ」と手振りをして、身をかがめて天野奈々を後部座席から抱き下ろした。

彼女を自分の腕の中にしっかりと抱きかかえた。

「このホテルは安全じゃない。彼女を屋敷に連れて行く」

安藤皓司はうなずいたが、それでも一言付け加えた。「明朝7時から仕事が始まります」

「明朝迎えに来てくれ。住所は携帯に送る」

そう言うと、墨野宙は天野奈々をスポーツカーに乗せ、素早く去っていった。

安藤皓司は墨野宙が言ったホテルが安全ではないという言葉を思い返し、今日教会で出会ったパパラッチのことを思い出した。マネージャーとして、このような豊かな想像をするのは非常に不本意だったが、神野真美がこのようなことをする可能性は十分にあると考えた……

草野仁美と親密だった頃、暗がりにいた影を思い出す。