第224章 内定なら正直に言え

天野奈々は橋本ことのマネージャーの冷やかしを無視し、落ち着いた態度を保ち続けた。

　　その時、エレベーターのドアが開き、スタンソンのアシスタントがエレベーターの入り口に立っていた。橋本ことを見るなり、すぐに近づいて言った。「天野さん、こんにちは……スタンソンさんがお待ちです。」

　　エレベーターから出てきた数人は皆呆然としていた。特に橋本ことと彼女のマネージャーは、顔が急に真っ赤になった。

　　天野奈々もすぐに、スタンソンが言っていた間違いがどの段階で起きたのかを理解した。

　　実は、アシスタントが人を間違えたのだ……そしてスタンソンもアシスタントに再度指示するのを忘れていた。

　　「天野さん？」

　　「私は天野ではありません！」橋本ことは恥ずかしかったが、事実を述べた。

　　「間違いはないはずです。スタンソンさんが求めているのは天野奈々さんで、あなたですよ……」アシスタントは履歴書を取り出して見始め、天野奈々の写真を見た途端、自分の間違いに気づいた。「あら、私が間違えてしまいました。」

　　「つまり、ExcaliburQが契約しようとしているイメージアンバサダーは、橋本ことなのか天野奈々なのか？」橋本ことのマネージャーは怒りを込めてアシスタントに尋ねた。

　　アシスタントは顔を真っ赤にして、橋本ことを見たり天野奈々を見たりしながら、まともな言葉を発することができなかった。

　　むしろ山本修治が、直接天野奈々に言った。「行きましょう。スタンソンさんとの契約の時間が近づいています。遅刻は失礼ですから。」

　　天野奈々は数人を通り過ぎて一番前を歩き、恥ずかしそうな橋本こととアシスタントを後ろに置いていった。

　　橋本ことのマネージャーは納得がいかず、橋本ことを引っ張って追いかけた。「私たちもExcaliburQのアシスタントから契約のために来るよう通知されたんです……」

　　スタンソンのアシスタントはこれを見て、顔色が赤から白に変わった。これからどうやって収拾をつければいいのか分からなかったからだ。

　　山本修治は橋本ことの二人が後ろについてくるのを見て、思わず笑った。「奪えないものは奪えないんだ。」