第221章 アンバサダーの座が奪われそう！

業界の内情を見抜き、様々な恋愛を目にしてきた。どんなに愛し合っていた関係も、最後には悲劇で終わることがある。

それは、彼が天野奈々がどんな女性なのかを理解していなかったからだ。外面では、尊厳が彼女の底線であり、彼女のすべてだ。しかし、恋愛に関しては、天野奈々の考え方は伝統的ではない。たとえ最後に些細な理由で墨野宙と口論になったとしても、決してこんな素晴らしい男性を手放すことはないだろう。

こうして、天野奈々がミラノに到着した初日は、病気で終わった。注目すべきは、中村さんが天野奈々をホテルに連れ戻した時、エレベーターで橋本ことにも出くわしたことだ。

橋本ことは白い毛皮のコートを着て、おしゃれな深紅のサングラスをかけていた。弱っている天野奈々を一瞥すると、自分のアシスタントの方を向いて笑った。

アシスタントは彼女の意図を理解し、思わず噴き出した。「まだ本当の戦場に立っていないのに、もう倒れちゃったの？怖くなったのかな？」

天野奈々は今、相手を見る元気もなく、静かに中村さんの腕の中に寄りかかっていた。中村さんも以前のように愚かに反撃することはせず、ただ少し嘲笑うような様子で相手を見つめ、相手の目に怒りの炎が燃えるまで…

橋本ことは特別美人というわけではないが、非常に特徴的な顔立ちの女性だ。特に頬骨の上の黒子は、ランウェイの上で人々の記憶に残る。

天野奈々は実際、橋本ことの能力を疑っていなかった。スターキングに入れたということは、彼女が専門分野で誇れる実力を持っていることを示している。

だから、彼女が傲慢であることを特におかしいとは思わなかった。

もちろん、山本修治が何も言わなかったのは、橋本ことが確かに能力があるだけでなく、バックグラウンドもあるからだ。もし橋本ことと天野奈々がExcaliburQのアンバサダーを争うなら、負ける可能性が高いのは天野奈々かもしれない。

彼女はすでに墨野宙と結婚しているが、山本修治は天野奈々が墨野宙との関係をあちこちで自慢したがらないことも信じていた。

すぐに、橋本ことはエレベーターを出た。

彼女特有のスタイルと誇りを携えて。