「何も問題ないって言ってたじゃない」深水藍華は約1メートルの高さのステージを見て、天野奈々が先ほど転がり落ちたことを思い出し、急いで彼女の腕をつかんで確認した。「絶対にニュースになるわよ。他の人が見ていないと思ってるの?」
深水藍華は天野奈々の心配を知っていたので、墨野宙の代わりに「他の人」という言葉を使った。
しかし、天野奈々は少し笑って説明した。「幸い、下はカーペットだったから……」
授賞式の司会者も駆け寄って来て、天野奈々を助け起こした。「歩けますか?病院に行った方がいいですか?」
天野奈々は首を振った。実際、転倒した瞬間だけ痛みが強かったが、転がり落ちる時はそれほど感じなかった。
「わかりました。少し休んでください。何か必要なことがあれば、いつでも言ってくださいね」司会者は天野奈々を慰めた。「無理をしないでくださいよ……」