第235章 彼女の歌は私だけが聴ける

橋本ことは、天野奈々が怒ったり取り乱したりしないまでも、少なくとも心の中では傷つくだろうと思っていた。しかし……天野奈々はただ目を閉じて、そして橋本ことに言った。「あなたの言葉は私には効き目がないわ」

自制心について言えば、自分の夫以外に、天野奈々はまだ自分より優れた人物を見たことがなかった。

敵に動揺させられて相手の罠にはまるようなことは、彼女にはあり得なかった。

橋本ことは軽蔑的に笑い、突然、自分が天野奈々を過小評価していたことに気づいた。

「ほら……また賞をもらったわね。世界十大美胸賞よ」

橋本ことは3、4個の賞を受賞したが、どれも重要なものではなかった。重要な賞は深水藍華たちの手中にあったからだ。1位のモデルは海輝のもう一人の国宝級人物で、スーパーモデルであるだけでなく、若くして自身のファッションブランドを立ち上げ、常にファッション界のトップに君臨し、このような場にはめったに姿を見せない。