「天野奈々の人生がよくなるかどうかは、あなたが決めることではありません。自分のことを心配しなさい」と言って、山本修治は立ち去ろうとしたが、ドアのところで振り返って言った。「メディアの記者たちはあなたから引き離しました。出て行くなら今がチャンスです」
東雲愛理は山本修治を見つめ、突然笑い出した。「あなたも私のお尻と胸が好きで、私を枕営業させたいの?」
山本修治はそれを鼻で笑った。「夢でも見ているのか?」
東雲愛理は自嘲気味に微笑み、体を支えてベッドから降りようとした。「山本修治、CICIはもういいわ。ただ一つだけお願いがあるの。私を家に送って」
6年の知り合いで、たとえ接点が少なくても、こんなに冷たくする必要はないだろう。
山本修治はしばらく考えてから、頷いた。「服を着替えなさい」
東雲愛理はすぐに変装し、山本修治の助けを借りて無事に病院を出た。しかし、山本修治が彼女を家まで送り届けると、東雲愛理の家の中は散らかり放題で、価値のあるものはすべて持ち去られていた。言うまでもなく、これは夏目凛の仕業だった。
夏目凛だけが東雲愛理のアパートの鍵を持っていたのだ。
そしてこの瞬間、東雲愛理はついに何も持っていないことを実感し、崩れ落ちるように地面にしゃがみ込んだ。
山本修治は義理から彼女の手を引っ張ったが、この一瞬の行動が、向かいのビルに隠れてカメラを構えていたパパラッチに撮影されてしまった。
すぐにネット上でニュースが流れた。海輝エンターテインメントのアーティスト総監督山本修治、深水藍華に続いて東雲愛理まで、二股を楽しむ!
さらに悪質なのは、山本修治がアーティストに枕営業を強要し、落ちぶれた元モデルに手を差し伸べたのは実は肉体関係を持とうとしているのだと指摘するものもあった。
しかし、どう言われようと、山本修治が東雲愛理の手を引っ張った写真は事実だった。
……
天野奈々がこの芸能ニュースを見たとき、深水藍華のアパートにいた。山本修治が東雲愛理の手を引っ張る写真が画面いっぱいに拡大され、天野奈々は思わず深水藍華の方を見た。
深水藍華はあまり言葉を発せず、ただテレビを消した。うるさいからだと言って。
「あおい、山本修治はそんな人じゃないわ」