天野奈々も同じくグラスを持ち上げた。これは現在、最年少の映画帝王と称されている人物だ……
まさか彼女のことを直接「小師妹」と呼ぶなんて!
もしこの映画帝王のファンの女の子たちが知ったら、嫉妬で狂ってしまうんじゃないだろうか?
白いテールコートを着た若い映画帝王は、向かい側にいる寄り添う美しいカップルを見て、二人の指輪に気づいた。二人の関係を知っていながらも、思わず感嘆せずにはいられなかった。「墨野社長は本当に幸せ者だ」
天野奈々は相手の深い意味を感じ取り、瞳の奥に深い光を宿した。しかし……相手はただ微笑むだけで、再び天野奈々に乾杯を求めた。「小師妹、今後何か助けが必要なことがあれば、遠慮なく言ってくれ。特に芸能界に進出したいなら」
「ありがとうございます、先輩」
このような光景を目にした人々は、みな驚きを隠せなかった……
表向きは東雲愛理の勝利だった。海輝の社長が来たからだ。しかし、墨野宙は天野奈々を同伴し、人気芸能人を紹介してサークルに加えただけでなく、皆の前で非常に親密な態度を示した。
「ねえ、二人の指輪に気づいた?」芸能人たちは再び噂話に花を咲かせ始めた。
「でも、デザインを見るとカップルものじゃないみたいだよ。それに、天野奈々のインタビューで見たけど、彼女はLMの指輪が好きだから、これを着けているのは別に不思議じゃない」
「天野奈々が着けているのは驚かないけど、社長が着けているのを見たことある?まさか天野奈々が着けているから社長も買って着けたの?」
「もしそうだとしたら、すごく甘いよね。気づいた?天野奈々はドレスを着ていなくても、社長の隣にいるだけで十分輝いているわ」
「それはそうでしょ。誰だって社長にあんなふうに寄り添われたら、輝いて見えるわよ」
墨野宙が天野奈々を連れて現れた瞬間から……東雲愛理はすでに影が薄くなっていた!
彼女がどれだけ強い光環を纏っていても、どれだけ人々の注目を集めていても、墨野宙と天野奈々の組み合わせほど人目を引くことはできなかった。皆の目には、天野奈々は伝説のような存在だった。他の人なら数年、あるいは数十年かかるようなことを、彼女はわずか3、4ヶ月で成し遂げたのだ。
過去の名モデルから、彼女本来の地位に戻ってきた……