第315章 面白い展開を期待しよう

『バカ弟子』の撮影現場——

  撮影開始からわずか数日で、高宮美咲の撮影はすでに半分以上終わっていた。シーンは多くないが、非常に重要なものだった。

  ヘル監督は天野奈々が最適な人選だと考えていたが、高宮美咲の演技力を認めざるを得なかった。泣きのシーンも爆発的な場面も、とても迫力があり、人々を魅了した。

  映画帝王の森口響は、高宮美咲がこれほど必死に撮影をこなしているのを見て、私的に彼女に言った。「君の演技力は誰もが認めるところだ。簡単に誰かに代わられることはない。そんなに急ぐ必要はないよ。」

  高宮美咲は少し驚いた。いつもクールで率直な映画帝王が彼女のために話してくれるとは思わなかった。しかし、彼女は罪悪感を感じていた。彼女が撮影を急いでいるのは、役を奪われることを恐れているからではなく、J-KINGが天野奈々と墨野宙を陥れようとすることの共犯者だったからだ。

  「大丈夫です……」高宮美咲はやや冷たく答えた。

  森口響は冷笑し、続けて言った。「我々は海輝の人間ではないからこそ……理由もなく君の味方をしているんだ。君の役は誰でも演じられるものじゃない。ましてやモデルなんかには。」

  「ありがとうございます。その自信はあります。」高宮美咲は深呼吸をした。自分が多くを語れば語るほど、心の中の不快感が増すのを感じた。

  メイクルームには、雑然と置かれた雑誌の中に、天野奈々のTQの表紙があった。高宮美咲はそれを手に取り、表紙の天野奈々の目を見た。その目は……

  人の心を貫くような生き生きとした輝きを持っていた。

  天野奈々は無辜だ。しかし、誰が無辜ではないのだろう?

  芸能人が権力闘争に巻き込まれたら、後には汚れしか残らない……

  そう考えた高宮美咲は、天野奈々の表紙が印刷された雑誌をゴミ箱に投げ捨てた。

  天野奈々、彼女を責めないでほしい……

  ……

  ミラノ、ヒルトンホテル。

  天野奈々と山本修治が一緒にチェックインしたとき、すでにイタリア時間の10時だった。

  天野奈々は墨野宙に電話をして無事を報告し、荷物を置いた山本修治に言った。「佐藤 あおいに会いに行きましょう。彼女もこのホテルにいるはずです。」