第325章 妖狐

夜の10時、海輝社長室はまだ明るく照らされていた。

山本修治は結婚式を終えたばかりだったが、海輝に問題が起きたと聞いて、式が終わるとすぐに深水藍華と共に東京に戻った。案の定、海輝に着くと、墨野宙がまだ帰宅していないことに気づいた。

墨野宙は頭を上げて山本修治を見て、相変わらず低い声で言った。「何しに戻ってきた？」

「えっと……」墨野宙の様子を見ると、全く焦っている様子はない。そのため、山本修治は理解に苦しみながら額を撫でた。「問題はかなり厄介だと思ったんですが……あなたの様子を見ると、あまり急いでいないようですね。解決策があるなら、なぜ帰宅しないんですか？」

「私の様子があまり急いでいないように見えるか？」墨野宙は山本修治に聞き返した。

墨野宙の目を通して、山本修治はようやく理解した。要するに、焦っているふりをして、取締役会を急いで緊急会議を開かせるということだ。このような身内の粛清の機会はそう多くない。せっかく向こうから来たのだから、しっかりと掴まなければならない。

「対策は？」

「人の道をもって、人に報いる！」墨野宙は一言で山本修治の疑問に答えた。

だから、ネットユーザーは、海輝が直接謝罪し、責任を負うと思っていたが、このようなファン同士の乱闘で、海輝がどんな責任を負うべきなのかを考えたことはなかった。

ネットユーザーは天野奈々が出てきて謝罪し、激しい雰囲気を和らげると思っていたが、実際のところ、この件は天野奈々とはあまり関係がない。墨野宙の経営陣さえも発言していないのに、彼女が出てくる必要はさらにない。結局のところ、天野ファンはもともと冤罪を被っていたのだ。

彼女が本当に立ち上がれば、逆にこれが彼女のファンの過ちだと認めることになる。

そのため、海輝が夜通し出した広報ニュースは、たった一つの文章だけだった……

すでに警察に通報済みで、警察が調査に入る。事の前後関係、善悪是非を明らかにする必要があり、すべて法的手続きに従う。

この声明が出るや否や、高宮のファンはすぐに抗議を申し立て、事実の真相はすでに十分明らかだと主張し、海輝は単に責任を回避しようとしているだけだと考えた。