第357章 ただの笑い話じゃないの？

深夜、ホテルの浴室で。

墨野宙は天野奈々を抱きしめながら浴槽に横たわり、彼女の背中に熱い口づけを落としていた。

今日の出産シーンの撮影で、天野奈々は何度も地面を転がり、背中が少し擦り剥けていた。墨野宙はその赤みを帯びた傷を見て、瞳が急に暗くなった。「怪我したのか？」

「どこ？」天野奈々は全く痛みを感じていなかった。「たぶん軽い傷よ」

墨野宙は彼女の肩に顎を乗せ、低い声で耳元に囁いた。「これからは軽い傷も許さない」

「でも私、外の女の子たちが羨ましいの。トラブルに巻き込まれたり、喧嘩したりして、自分の夫が助けに来てくれるの...」

「初めて知ったよ、墨野夫人にも暴力的な一面があるとは」墨野宙は天野奈々をさらに強く抱きしめた。「いいよ、もし機会があれば、必ず君のために喧嘩してみせる」

「池田さんの件、どう対処するつもり？」天野奈々は墨野宙に背中を預け、彼の完璧な体に触れながら、頬を赤らめていた。おそらく正面から見ていないせいか、まだ完全には男の色気に魅了されていなかった。

「そんな些細なことに、私が出る必要があるのか？」

墨野宙の問いに、天野奈々は笑い声を漏らした。「でも、陸野徹が確かに電話したわよね...」

「しかし彼女は自重しない」墨野宙の瞳が一層深くなった。「清らかなお嬢様でいられたのに、わざわざ芸能界の人に喧嘩を売る...彼女の考え通り、芸能界は役者ばかりだ」

「君を傷つけようとする者...私たちの関係を壊そうとする者...一人も見逃さない」

墨野宙の誓いのような囁きを聞いて、天野奈々の瞳も瞬時に迷いを帯びていった...

...

翌日、多くの人々が海輝に池田ここはの暴露の真相を確認する電話をかけてきた。

多くの人が天野奈々を第三者だと考え、他人の感情を壊したと...

しかし、このような事に対して、海輝の人々は対応する気も起きなかった。

もちろん、陸野徹は中村さんと実家訪問で休暇を取っていたため、対応は山本修治の肩に落ちることになった。山本修治は思わず嘆いた。昇進前と昇進後で、一体何が違うというのか？

佐藤あおいがようやく家にいるというのに、ただ妻と食事をしたいだけなのに、記者たちが至る所で待ち伏せしているとは！