第360章 これはあなたが強いたこと

深夜十時、豪雨が急に止んだ。

天野奈々は墨野宙の慰めで落ち着きを取り戻し、夫婦は抱き合って眠り、お互いの頬を手で包んでいた。

「今夜の撮影は、ヘルが延期してくれた。眠りなさい」

天野奈々は墨野宙の胸に潜り込み、しっかりと体を寄せた。「大丈夫、30分だけ寝るわ。起きて撮影に戻りたいの」

「いいよ。眠りたいなら抱いていてあげる。撮影したいなら付き添うよ」墨野宙は天野奈々を無理に休ませようとせず、彼女の意思を尊重した。会長と天野奈々の会話を聞いた後、墨野宙は突然、天野奈々の幼少期が多くの苦痛と試練に満ちていたことに気付いたのだ。

天野家の方々からの排斥と嫌がらせ、会長の支配欲、そして彼女自身の罪悪感と苦しみ……

これらは考えるだけでも胸が痛むことだった。

そして1時間後、夜の撮影が始まった……

……

深夜、会長が天野家に戻ると、すぐに助手が家庭医を呼び、天野家の他の人々の注目を集めた。

天野茜は焦りながら前後を行き来し、会長の容態が安定してから、やっと助手に尋ねた。「おじいさまはどこへ行かれたの?どうして急に発作が?」

「それは……」助手は困ったような表情を見せた。

「何か言えないことでもあるの?おじいさまがこんな状態なのに……」天野茜は非常に焦った様子を見せた。

「会長は天野さんに会いに行かれました」助手は事実を告げた。

天野茜はそれを聞いて、突然呆然とした。「おじいさまが奈々に会いに行ったって?おじいさまは二度と会わないって言ってたのに……」

「どちらも孫娘なのに、会わないわけがありません。会長はただの気休めの言葉です!」

天野茜は薬と水を助手に渡し、振り返ることもなく自室に入った。彼女はもう限界まで我慢してきたのに、なぜ天野奈々は天野家から離れようとしないのか?

彼女は心の中でよく分かっていた。天野会長の心の中の後継者候補は、ずっと天野奈々だったということを。しかし、残念ながら、天野奈々は愛人の子供で、誰でもいいが、彼女にはその資格がないのだ。

「おじいさま……これはあなたが私を追い詰めたのよ」天野茜は拳を握りしめ、無意識のうちに、天野奈々を天野家から遠ざけたいと思った。もっと遠くへ、もっともっと遠くへ……

……

「第181シーン、3番目のカット、スタート!」