第366章 なるなら墨野夫人に!

「弁護士からの通告書は後ほど天野家に届けます!」

「天野家がどう戦おうと、私、墨野宙は喜んで相手になりましょう」

墨野宙のこの言葉は、重々しく、そして断固としたもので、一切の曖昧さはなかった。彼は自分の立場を明確に表明した。天野家と決着をつけるのだと。

天野家が必死に隠そうとしていることを、あえて暴露する。

天野家が苦労して切り捨てようとしたものを、あえて守る。

なぜなら、天野家の天野奈々に対する仕打ちは、これで終わりだと、全ての人に知らせたいからだ。

「今日から、天野奈々は私の姓を名乗る。私の最高の全てを、妻に捧げよう」そう言って、墨野宙は会場の入口に手を伸ばした。

ガラッという大きな音とともに、会場の扉が警備員によって開かれ、天野奈々が眩い光を纏って、扉の向こうに立っていた。

「天野奈々が来た...」

「なんて美しいんでしょう?」

「まるで女王様のように大切にされているわね...」記者たちは次々と天野奈々の写真を撮った。「本当に綺麗だ」

押し寄せる記者たちを見つめ、少し離れた場所で彼女を迎える墨野宙を見て、天野奈々は息を止めて深く吸い込んだ。そして、彼女は歩を進め、壇上へと向かった。

「天野奈々...」

「天野奈々はすごく華やかね。天野家に犠牲にされたとしても、墨野宙と結婚できたんだから」

「こう考えると、天野家のお嬢様かどうかなんて関係ないわね。こんなに愛してくれる夫がいるんだから」

「私は墨野社長の対処の仕方が好きよ。天野家は天野奈々を犠牲にしておいて、のうのうとしていられると思ったの?そうはいかないわ。墨野社長、よくやった!」

道中、人々の議論の声は多かった。羨望の声も、驚きの声も、批判の声も、称賛の声も、天野奈々の耳には全く入らなかった。なぜなら、この瞬間、彼女の目には墨野宙しか映っていなかったから。

しばらくして、天野奈々はついに墨野宙の前に立った。そして墨野宙がまず最初にしたことは、妻を抱きしめることだった。

「天野さん、一言お願いします...」

「天野さん...」

記者たちの呼びかけを聞いて、天野奈々は墨野宙の腕から身を離し、記者たちに深々と一礼をした後、墨野宙から マイクを受け取った。「皆様、こんにちは。天野奈々です」