第385章 着なくてもいい

「SF小説に夢中な作家だ」と墨野宙は静かに答えた。

「じゃあ、やっぱり作家のままでいいわね……」と天野奈々は言った。「小説がそう設定しているなら、きっと理由があるはずよ。それに、さっきも言ったでしょう?これも一つの修行だと思えばいいのよ!」

「まあ、そうだな……君の言う通りだ」実際のところ、スタントマンでも作家でも、同じように面白い展開になるだろう。ただし、作家という弱々しい設定は、ある意味で観客の恐怖心を煽ることができる。これは災害映画なのだから、緊張感がなければ完全な失敗ではないか?

実は、天野奈々が最も安心していたのは、今回はプロデューサーも監督も身内だということで、より息の合った協力ができることだった。

……

一方。

夕方、天野茜は車で帰宅し、リビングに入ったところで、ちょうど祖父の弁護士が帰るところに出くわした。茜は心臓が飛び出しそうになり、すぐに声をかけた。「田中弁護士、お帰りですか?お送りしましょうか」