「SF小説に夢中な作家だ」と墨野宙は静かに答えた。
「じゃあ、やっぱり作家のままでいいわね……」と天野奈々は言った。「小説がそう設定しているなら、きっと理由があるはずよ。それに、さっきも言ったでしょう?これも一つの修行だと思えばいいのよ!」
「まあ、そうだな……君の言う通りだ」実際のところ、スタントマンでも作家でも、同じように面白い展開になるだろう。ただし、作家という弱々しい設定は、ある意味で観客の恐怖心を煽ることができる。これは災害映画なのだから、緊張感がなければ完全な失敗ではないか?
実は、天野奈々が最も安心していたのは、今回はプロデューサーも監督も身内だということで、より息の合った協力ができることだった。
……
一方。
夕方、天野茜は車で帰宅し、リビングに入ったところで、ちょうど祖父の弁護士が帰るところに出くわした。茜は心臓が飛び出しそうになり、すぐに声をかけた。「田中弁護士、お帰りですか?お送りしましょうか」
「お嬢様、ご心配なく……」相手は彼女を見るなり緊張し、手を振って避けながら、足早に立ち去った。
これは茜の疑念をさらに深めた。やはり、祖父の動向を把握しなければならない。きっと祖父が何か指示したに違いない。だから弁護士は彼女を見るなり、まるでネズミが猫を見たかのように逃げ出したのだ。
天野茜は暗い表情を浮かべ、すぐに助手に電話をかけた。「祖父が弁護士を呼んだ理由を調べて。遅くとも明日までに結果が欲しい」
「かしこまりました、天野社長」
天野奈々が存在する限り、彼女は背中に棘が刺さったような思いだった。
しかも今回、悪霊事件のニュースが広まったが、勝ちはしなかったものの、負けてもいない。少なくとも、今の天野奈々は映画に出られないし、業界人からも警戒されている。
彼女があれほど憎む顔が、テレビ画面に映し出されるたびに、きっと寝食を忘れてしまうだろう。
……
夜になり、ガラスハウスは明かりで輝いていた。
実際、冬島香がこの島に来て以来、彼女は絶えず環境に慣れようとしていた。
しかし、北川東吾はこのガラスハウスを迷路のように作っており、どう歩いても、まるでその場で足踏みしているような感覚だった。そして自称生活自立できないという厄介者の北川東吾は、今どこにいるのか分からない……