深夜、墨野宙はまだ書斎に座っていた。陸野徹の動きはさらに早く、わずか5時間で夏目楓の弟の居場所を突き止めた。同級生と一緒に携帯を無くし、家族の電話番号も覚えていなかったため、すぐに連絡が取れなかったことが判明した。
現在、安全は確保されている。
夏目楓はこの知らせを聞いて安堵の息をついた。天野剛と共に海輝のスタジオにまだ残っていた。暗闇の中、二人は顔を見合わせ、突然笑みを交わした。
「墨野社長は本当に凄いですね。一目で状況を見抜くなんて」と夏目楓は感嘆した。
「当たり前だよ。誰でも姉さんと結婚できると思ってるの?」天野剛はギターを抱えながら笑った。「弟さんが無事なら、あの亀田社長の末路を見守るだけだね」
夏目楓も微笑みながら頷いた。
「さあ、まだ元気だから伴奏を頼むよ」
「もちろんです」夏目楓はピアノの前に座った……
……
翌朝、海輝の社長室で、墨野宙は机の上で亀田社長に関する完全な資料を確認していた。
「この亀田社長は、若い頃は不良で、傲慢な行動をしていたが、彼には一つの弱点がある」
「それは何も恐れない彼が、唯一佐藤親分という人物を恐れているということだ。現在の地位まで引き上げてくれた恩人だと言われており、そのため佐藤親分を非常に警戒している」
陸野徹は墨野宙の傍らで、一晩中調査して得た情報を全て報告し、資料を読む時間を節約した。
「この亀田社長は見た目は良くないが、佐藤親分は評判が良く、正直な人物で義理堅い。ただ、最近は表に出ることが少ない」
墨野宙は資料を取り出し、履歴書の写真を見た後、資料を脇に投げた。「佐藤親分と会う約束を取れ……」
「既に手配済みです。昼までには返事が来るはずです」陸野徹は恭しく答えた。
墨野宙と共に、このような大小の問題を処理してきた回数はもう数えきれないほどだった。
「同時に亀田社長とも約束を取れ」墨野宙は冷たい声で言った。「交渉の準備をしろ……」
そう言うと、この件は脇に置き、海輝の他の業務の処理を続けた。
「明日の『バカ弟子』第三回試写会には、最後のカテゴリーの人々を招待する……」
言うまでもなく、陸野徹は理解していた。第三カテゴリーとは、有名な記者、芸能記者、そして影響力のあるジャーナリストたちのことだ。