第412章 刀の山火の海でも、私は行く覚悟

夏目楓は書香門第の出身で、歌うことが趣味で、特にポップミュージックが好きだった。彼女が海輝に入社した理由は、声質や歌唱力ではなく、作詞作曲ができることだった。

彼女は天野剛と確かに共演したことがあり、かなり親しい関係にあった。そのため、彼女は亀田社長に目をつけられ、生きた的となってしまった。

芸能界の水は常に深く、彼女は心の準備をしていた。華やかな表面の裏には、常に無数の暗闇が潜んでいるのだ。

しかし……

だからといって、悪事に加担しなければならないのだろうか?

環境は彼女にはどうすることもできないが、自分の選択は自分で決められる!

海輝に戻ると、練習室で新曲の練習をしている天野剛を見かけた。彼のクリアな声を聞いて、一瞬躊躇したが、それでもドアを開けた。

「ほしくん、話があるの」

天野剛はギターを止め、夏目楓を一瞥してから立ち上がり、「別の場所で話そうか?」と言った。

「屋上に行きましょう」

二人は前後して屋上へ向かい、天野剛は手すりに寄りかかって夏目楓を見た。「で、何?」

「あなたの本名は天野剛で、天野奈々の弟さんですよね?」夏目楓は両手を握りしめて言った。実際、彼女は緊張していた。自分の選択が正しいのか間違っているのか、わからなかったから。

天野剛は少し驚いた様子で、夏目楓の整った顔立ちをじっと見つめてから頷いた。「どうしてそれを?」

「『バカ弟子』と同時上映の『魔王スピアキング』のプロデューサーが、私とあなたが共演したことを知っていて、私の弟を捕まえて、あなたから天野奈々さんの情報を聞き出すように脅してきたの」夏目楓は急いで説明した。

そよ風が彼女の髪を揺らし、より一層純粋で誠実な印象を与えていた。

「私はそんなことはしたくないし、人に脅されるのも嫌。でも、私の弟を救うために、一緒に方法を考えてもらえませんか?」

天野剛は彼女を見つめた。彼女は妥協することもできたはずなのに、正直に打ち明けることを選んだ。

「申し訳ない。私たち姉弟とは全く関係のない人までが、私たちのせいで危険な目に遭うなんて考えもしなかった」

「あなたも望んでいなかったことだってわかってます。今は何より私の弟を救うことが先決です。まだ17歳なんです……」