第432章 痕を残さないで

教会の裏には、海の見える高級マンションがあった。

二人はリビングに入ってから、お互いの体を寄せ合い、相手の胸から空気を吸い取るように、息ができなくなるまでキスを交わした。天野奈々は、やっと墨野宙の唇から離れた。

リビングの中央に立ち、墨野宙は周りを見回してから、天野奈々の耳元で低く笑った。「新婚の部屋まで用意してくれたのか?」

「二階よ……」天野奈々は小声で答えた。

墨野宙はそれを聞くと、すぐに彼女を抱き上げ、瞳には既に****が満ちていた。二階の部屋のドアを蹴り開け、天野奈々を壁に押し付け、両手を高く上げさせ、激しくキスを浴びせた……

天野奈々は痛いキスに、墨野宙を強く押しのけた。「跡を付けないで……撮影があるから。」

「もう我慢できない。」墨野宙は天野奈々のウェディングドレスを引き裂き、大きなベッドに投げ入れた……

天野奈々は墨野宙の制御不能な様子を感じ取り、口元に笑みが浮かんだが、すぐに墨野宙にすべて奪われてしまった。

広々とした部屋の中で、海風が隅々まで吹き抜け、遠くの鏡には二つの絡み合う体が映し出されていた……

男が求めるものは、実にシンプルだ。あなたの心と体があれば、一匹の血に飢えた狼を鎮めることができる!

幾度もの愛の営みの後、天野奈々は疲れ果てて墨野宙の腕の中で横たわっていたが、彼はまだ満足していないようだった……

「宙、もうやめて。」朦朧とした意識の中で、天野奈々は全身の力が抜けていくのを感じた。墨野宙は軽く笑いながら彼女の体を拭き清めた。天野奈々の口から「もうやめて」というような****な言葉を聞くことは珍しかった。

ウェディングドレスは既にボロボロになり、天野奈々は包装された贈り物のようだった。雪のような肌を見つめながら、墨野宙は思った。もしこんな贈り物を毎日開けられるなら、毎日が誕生日でもいいと。

不思議だ……

普段も同じように過ごしているのに、この誕生日は、33年の人生で最高の誕生日だと感じた。

天野奈々は午後まで眠り続け、目覚めた後も急いで服を着ることはせず、墨野宙と一緒に布団に包まれたまま、床から天井までのガラス窓の前に立って、夕焼けと日没を眺めていた。

「将来、子供は何人欲しい?」