第566章 除名

下川様の言葉を聞き終わると、新井光は突然体が硬直した。彼女は誰よりもこの男の傍にいたが、それでも愛人という身分から逃れることはできなかった。

そして、芸能界に入り、芸能人になること以外、この人生で自由を得ることは永遠にできないのだ。

永遠に自由を失う!

結局、彼女は多すぎることを知ってしまったのだから……

「ただし、もしお前が天野奈々に勝てれば、私の顔も立つ。その時は、欲しいものがあれば言ってみろ。もちろん、いつもの通り、度を超えなければな……」下川様は新井光の頬を軽く叩くと立ち上がり、ソファに座ったまま表情を抑える新井光を残して去った。

獣でさえ、このような繰り返される苦痛の中で発狂するだろう。まして、彼女は心も自尊心も持つ人間なのに?

だから、天野奈々に対して、地位や賞での競争以外に、この世になぜ墨野宙のような夫がいるのか、なぜ墨野夫婦のような固い絆があるのかが憎かった。なぜ、世の中の人々は皆、彼女に逆らうのか。最も重要なのは、天野奈々は全てを手に入れた……子供まで、墨野宙は彼らに最も強固な保護を与えた。一方、彼女は……

新井光は無意識に腹部に手を当てた。ここには、かつて三つの命が宿っていた。しかし下川様は息子の気持ちを考慮して、彼女に三度の中絶手術をさせ、今では、彼女は母親になる権利を完全に失ってしまった。

天野奈々、あなたは全てを手に入れた、少し失うのはどうかしら?

実際、この件で喜んでいるのは新井光だけではない。海輝がこのように攻撃され、墨野宙と天野奈々がこのように非難されるのを見て、田中翠の快感は新井光に劣らなかった。

例えば今、田中翠はソファでパソコンを抱えながらナッツを食べ、海輝が非難されるのを見て大笑いしていた。長い間こんなにすっきりした気分を味わったことがないかのように……

痛快!

近藤青子は白い部屋着姿でゆっくりと階段を降り、田中翠が心から笑っているのを見て、思わず口角を上げた。「何か良いことでもあったの?シェアしてくれない?」

田中翠は近藤青子が向かいに座るのを見ると、すぐに笑顔を消し、冷たい目で近藤青子を見つめた。「天野奈々は終わりよ。知らないの?」

「あの時、誰かが天野奈々は必ず賞を取ると断言していたけど、今や彼女は日本アカデミー賞からノミネート取り消しになりそうよ。」